「お金は銀行が創っているの?」のポイント

片山 立:下田さんの著書に関する大野さんの要旨資料の紹介

 公共貨幣に関する成書は、公共貨幣フォーラム代表理事の山口薫氏の著書[1]、および山口薫氏と山口陽恵氏の共著[2]がすでに上梓されているが、さらに初学者に対して債務貨幣と公共貨幣のしくみについてわかりやすく解説した書籍[3]が、当フォーラムの理事である下田直能氏から2022年3月に発表されている。

 現在、ほとんどの国で実施されている債務貨幣と、その課題を解決する公共貨幣の仕組みを理解するためには、民間銀行が貸付の際に事実上のお金(要求払い預金)を無から創造できる信用創造のしくみの理解が不可欠である。

 下田氏の著書[3]では、信用創造の基本的な考え方と、信用創造にもとづく債務貨幣システムの課題、およびそれを解決する公共貨幣システムについて、初学者に対して平易な例を用いてとてもわかりやすく解説されている。

 公共貨幣フォーラムでは、隔週で定期的なミ―ティングをオンラインで開催しているが、今年(2022年)の7月から10月にかけて、会員の大野忠治氏が中心になって、この下田氏の著書[3]の勉強会を開催してきた。

 シズカの素朴な問いと、それに対するハカセの絶妙な解説をベースに展開されている下田氏の著書に対し、主要な概念とそれを示す図表をベースに構成された大野氏の資料は、信用創造、債務貨幣、公共貨幣、金融政策、財政政策などの基本概念の関係と構造の視点から債務貨幣の課題や公共貨幣という仕組みを理解できるものとなっている。

 たとえば、現状の債務貨幣の仕組みでは、政府予算の不足分を充当するため、政府が利払いを前提とした国債を発行しているが、2021年の国債の利払い費用は6.9兆円にもなっている[4]。

公共貨幣システムを導入することにより、毎年、必要なこの国債の利払い費用を解消することができるのである。

今回、この資料を公開することによって、債務貨幣システムの課題と公共貨幣システムの価値について理解していただける人が増えることを願っている。また、下田氏の著書[3]の理解を深められた方が、さらに公共貨幣の本質について記載された成書[1],[2]を読んでいただくことを期待している。

2022年12月1日(木)
公共貨幣フォーラム理事  夢・アーキテクティング工房代表 片山 立

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参考文献
[1]山口薫:公共貨幣 政府債務をゼロにする「現代版シカゴプラン」,東洋経済新報社,2015.9.24
[2]山口薫、山口陽恵:公共貨幣入門,集英社インターナショナル,2021.10.12
[3]下田直能:お金は銀行が創っているの? よくわかる債務貨幣と公共貨幣の仕組み,同時代社,2022.3.30
[4]公共貨幣フォーラム 【国債の年間の支払利息の調べ方】

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